教員資格認定試験 合格者の声
~「私」の教職のかたち~ vol.1

――教員資格認定試験を受験しようと思ったきっかけを教えてください。

実は私は学生時代には「教員になるぞ」という気持ちはありませんでした。大学卒業後、地方自治体の公務員として十年弱働いていました。社会貢献がしたいと思って入職したのですが、部署異動が多く、働いているうちにもっと専門性を身につけたいという気持ちが強くなっていきました。

そんなとき、大学時代にやっていた家庭教師の経験がとても楽しかったなと思い起こされました。「頑張る人を応援する」、「やり方がわからない人に伴走して、一緒にできるようになっていく」、その手応えを感じられることが嬉しく、面白みを感じていたのですが、それを思い返しているうちに、「子どもに関わる仕事がしたい」という思いが徐々に強くなっていきました。

そこで、「子どもに関わる仕事って何だろう」と考え始めた時、教職が選択肢の一つとして見えてきました。ただ、私の出身大学では小学校の教員免許が取れなかったので、教員免許は持っていませんでした。

そんな中、「大学で教職課程を履修していなくても教員免許を取得できる試験がある」と知り、驚きました。門戸が広く、ステップを一つずつ踏める仕組みが自分に合っているように感じ受験を決めましたが、その時点では、「教師になるぞ!」という強い決意というより、「まずは資格を取ってみようかな」という軽い気持ちでした。

――合格後はどんな道を選ばれたのでしょうか?

本試験に合格した後、すぐに教員になったわけではありません。私は慎重な性格で、何かを選択する時は相当悩むタイプのため、前職を少し続けた後、教育系NPOに転職しました。その団体は、学童や放課後子ども教室で放課後の子どもたちの支援を行っており、今振り返ってみても、子どもたちと向き合い、自分の気持ちを確かめていく大切な場所でした。

当時は、子どもとの関わりは一切なかったので、そもそも子どもと上手く接することができるのかどうか自分でもよく分からず、不安も多かったのですが、実際に働いてみると、子どもたちと過ごす時間が予想以上に面白く、毎日が新しい発見の連続でした。NPOの活動の場が学校内だったこともあり、先生方の姿をすぐそばで見ることができ、「学校は、子どもたちにとって本当に大事な場所なんだ」と、強く実感しました。

――初めて教壇に立ってみて、どう感じましたか?

大変かと聞かれれば……大変な仕事です。でも同時に、「いいこと」がたくさんある仕事だと実感しています。特に「子どもの人生の大切な1ページに伴走できる」ことは、この仕事の大きな魅力です。勇気が出ない子にはそっと背中を押したり、新しい視点を示したり。子どもの表情が変わっていく場面に立ち会えるのは、本当にやりがいがあります。

印象的な出来事として、授業になると机に突っ伏して何もやらないような子との関わりがあります。私はこれまでの人生でそういう子に出会わなかったので、なぜそうなるのか、最初は想像がつかなかったのです。でも、「やりなさい」と叱るのは違うと感じ、まずは本人の好きなことや素敵なところに着目して声をかけたり、距離感を探りながらゆっくりと関係をつくったりしていきました。すると、ある時ふとスイッチが入るように、前向きな姿が見られるようになりました。「子どもが力を発揮するにはまず安心できる場所作りが先」だと思えた体験でした。

あとは、体育が苦手と言っていた子が、のちのち「体育、面白い!」と言ってくれたり。工夫すると、子どもの反応に直結する、打てば響く感覚があります。

また、担任したクラスの子が、学年が変わっても休み時間に会いに来てくれたり、「あの時の授業が面白かった」と話してくれたりするのは、しみじみと嬉しいものです。

――大変だったことはどんなことですか?

まず、仕事量の多さと幅の広さに驚きました。教室や校内を整えること、集団行動を成立させること、子どもたちの心に寄り添うこと、保護者の方とのコミュニケーション、様々な行事の運営など、当初のイメージと異なり、授業以外にも様々な業務がありました。

異業種出身者にとっては、そもそも学級の30人以上、時には1000人近くの全校生徒といった「集団」をいっせいに動かすこと自体が新鮮で、最初はカルチャーショックに近いものがありました。また、人と人との間に立って調整することは前職でもありましたが、「クラスの子どもと、その一人一人の保護者」という関係性の中で行うのは、大変責任も重く、一筋縄ではいかないと感じています。

しかし、本を読んで「先人の技」を学んだり、周りの先生のやり方を観察したり、教えていただいたりして、少しずつできることが増えていきました。

自分にとって苦手なことがあっても、「子どもたちのためにやるしかない」と覚悟を決めてチャレンジすることで、逆に教えることが楽しくなることが面白いです。自分が上手くできないことでも、それを逆手にとって、「どのようなステップを踏んだらできるようになるのか」を考えるのがよいのかもしれません。

仕事を進める上で大事にしていることは、当たり前のことではありますが、ポジティブな声かけを意識することです。子どもの「人格」を大切にし、「静かにしなさい」、「ダメだよ」と頭ごなしに言うのではなく、まずは話を聞き、受容し、その後に「これをやろう」、「次はこれに挑戦だ」と、本人から前向きな行動が生まれる声かけを意識しています。

今年度は、娘の保育園のお迎えに行くことを目標に、なるべく効率的に仕事ができるように工夫をしています。

――異業種出身だからこそ役に立っていると感じることはありますか?

自信をもって「ある」と言えます。前職で行政がどう動いているかを経験していたことで、社会科の授業では具体的な話ができ、子どもにとってもイメージしやすいようです。

また、様々な立場の方と接する仕事だったので、保護者の方と向き合う際にも、相手の背景をリアルに想像しながら話せるのは大きな助けだと感じています。

異業種で培った経験はもちろん、教師が自分の中に様々なレイヤーを持っていることも、子どもたちにとってもプラスに働くのではと思います。

――ご自身のこれまでの経験や趣味が役に立っていると感じることはありますか?

学校では、自分のプライベートでの経験や趣味で得た何気ない知識も、子どもとの関係づくりや学びを支える場面で生かすことができます。たとえば、私は虫が好きなのですが、虫好きの子どもの気持ちが分かるし、一緒に楽しめます。また、音楽も好きなので、音楽が出てくる様々な場面でも自然と気持ちが乗りますし、子どもたちにもそれが伝わっていると思います。

一見、仕事とは関係なさそうに見える趣味でも、子どもと心を通わせる「ツール」にもなるし、学びのきっかけにもなる。全ての経験が活きる仕事だと思います。

――教員として働く中で、支えになっているものは何ですか?

学校の先生たちは忙しい中でも、お互いに助け合っています。「子どもたちや社会のために」という気持ちがぶれない集団の中で働けることも、続けられている理由の一つです。

また、家庭の支えは大きいです。妻が自身も働きながらも私を応援してくれるからこそ、教員の仕事にしっかり向き合えています。

そして最後は、やはり子どもの反応です。頑張った分が、表情や行動、言葉として返ってくることが、なによりのやりがいです。保護者や地域の方と、子どもたちの成長を喜び合えることも大きな励みになっています。

――今、教員として働くことは楽しいですか?

3年目の今、ようやく「楽しい」と感じられるようになりました。授業にも子どもたちとの関わりにも少し余裕が出てきて、毎日子どもと会うことにワクワクしています。中でも、子どもたちとやりとりしながら、授業を進めていく時間がなにより面白いです。国語の授業の時に、「この間、社会で出てきたものだ」という発言が出るなど、科目を横断的に学べることにも興奮します。

子どもたちが「学校が楽しい」と言ってくれるのも、すごく嬉しいです。冬休みの間に、デジタルの連絡帳で「早く学校に行きたい」と書いてくれた子もいました。

子どもたちは、思っていた以上にポジティブで温かい言葉をくれることに驚いています。例えば、「先生がんばって」と励ましてくれたり、私が「先生、土日にこんなことする予定なんだ」と話すと、「先生思いっきり楽しんできてね」と返してくれます。このような温かい人間関係を培えること自体が、稀有なことであり、この仕事の大きな魅力のひとつだと思っています。

――最後に、教職を目指すか迷っている方・教員資格認定試験への挑戦を考えている方へ、メッセージをお願いします。

まず一つ確かに言えることは、教職はとてもよい仕事だということです。こんなに面白い仕事はないと思います。子どもたちと一緒に学ぶという体験は尊いものです。

また、色々な背景をもつ先生が集まることは、子どもたちにとっては豊かな学びの環境につながると思います。

もし今、教職を目指すかどうか悩んでいるなら、ぜひ一度、現場の先生の話を聞いてみてほしいです。

熱血なタイプの先生もいれば、静かな先生もいます。スタイルは違っても、「子どもに向き合う」という一点では皆同じ方向を向いているのです。

もし過去の自分に言えるなら、「そんなに悩まず、まず一歩踏み出してみたら」と言ってあげたいです。

本記事は、インタビュー当時(令和8年)の内容です。