令和8年7月22日

NITSニュース第258号

はじめに

蝉の声が聞こえ、夏の深まりを感じる頃となりました。夏休みを迎えた校舎では、子どもたちの声が響く日常とは少し異なる時間が流れているのではないでしょうか。
夏休みは、日々の忙しさから少し離れ、新たな実践や考え方に触れる機会でもあります。そうした出会いが、新たな気づきや問いにつながることもあるかもしれません。

今月号の学びの交差点では、教職員支援機構 審議役 島谷千春「教職員研修の在り方を探究するマネプロ地域版」をお届けいたします。研修を通して育まれる学びや対話、その可能性について考えるきっかけとなれば幸いです。

今月の目次

1. 学びの交差点

2. お知らせ

1. 学びの交差点

教職員研修の在り方を探究するマネプロ地域版

独立行政法人教職員支援機構 審議役 島谷千春

一人ひとりの子どもを主語にする学校教育。教師は、子どもの主体的な学びを支える伴走者であるという考え方。個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実。こうした言葉や必要性は、多くの学校で共有されつつあります。

では、その学びを支える教師自身の学びは、どうでしょうか。

子どもたちに主体的で対話的で深い学びを求めるのであれば、教師自身の学びもまた、主体的で対話的で深いものである必要があるのではないか。「子どもの学びと教職員の学びは相似形」なのではないか。現在、NITSをはじめ全国の教職員研修に携わる人たちの中でキーワードとなっている「研修観の転換」は、こうした問いを出発点にしています。

その取組の一つが、「研修マネジメント力協働開発プログラム(地域版)」、通称「マネプロ地域版」です。

教職員研修を担当する教育委員会や教育センターの職員、各学校の研究主任、教職大学院関係者などが集い、これからの教職員研修の在り方を共に考えるプログラムとして、全国7ブロックに分けて、各地で展開しています。今年度も、各地域のNITSフェローとともに、地域ごとの実情に応じた形で企画・実施を進めています。

マネプロで大切にしているのは、単に新しい研修手法や型を学ぶことではありません。プログラムでは、対話や省察を多く盛り込んでいます。ただし、それは「対話を入れればよい」「講義を減らせばよい」という単純な話ではありません。

大切なことは、研修に参加する学び手をどのような存在として捉えるかということです。研修参加者は一人ひとり、学び方も、価値観も、置かれている文脈も異なります。力量形成のプロセスも、まっすぐな直線ではなく、うねりを伴うものです。同じ研修に参加しても、そこで得る学びや意味づけは一様ではありません。だからこそ、研修を「知識・スキルを提供して終わる場」としてではなく、それぞれの気づきやさらなる探究が生まれていく場として捉え直す必要があるのだと思います。

先生たちが変化や成長を実感する場面の多くは、日々の学校現場にあります。日々の実践、うまくいかなさ、試行錯誤、自分の行為が子どもの姿として跳ね返ってくる喜びや悔しさ。そうした経験の中で、先生たちは自分なりに納得できる「文脈」を形成していきます。

だとすれば、研修の役割は、現場から切り離された正解を渡すことではないのかもしれません。むしろ、先生たちがすでに持っている経験や違和感を出発点に、それを少し違う角度から見つめ直したり、他者の言葉とつなげたり、理論や概念と出会ってもらったりすること。その人自身の文脈の中で、次の実践に向かう問いが立ち上がるように支えること。そこに、これからの研修の大切な役割があるように感じています。

また、マネプロ地域版では、自治体や学校種、立場を越えた対話を大切にしています。教育委員会や研修センターの仕事は、どうしてもそれぞれの自治体の文化や前提の中で進んでいきます。それは自然なことですが、自分たちの当たり前を問い直す機会は、意識しなければなかなか生まれません。

だからこそ、県を越えて、立場を越えて、共に考える場をつくりたいと思っています。他地域の価値観や実践に触れることで、「同じようなことに悩んでいるのだ」と感じることもあります。一方で、「その見方はなかった」「自分たちの地域では何ができるだろう」と、自分たちの前提が少し揺らぐこともあります。その揺らぎやモヤモヤも含めて、学びの大切な入口なのだと思います。

研修観の転換とは、何か新しい型に置き換えることではありません。研修とは何か。教師の学びをどう捉えるのか。学び手をどう捉えるのか。そうした問いを、研修に関わる人たちが持ち続けることなのだと思います。

新しいことへの挑戦には、試行錯誤と仲間が必要です。

マネプロ地域版が、全国各地で、研修をつくる人たちの学び合いのハブとなり、ゆるやかなコミュニティとして広がっていくことを願っています。皆様の地域で開催される際には、ぜひご参加ください。中央研修とは異なり、関心のある方が自ら申し込むことのできるプログラムでもあります。

マネプロの場づくりのコンセプトは、「Gather / Wonder / Discover」。

集い、問い迷い、ともに発見しながら、これからの教職員研修について、みんなで楽しく、そして真剣に探究する場を、これからもつくっていきたいと思います。

2. お知らせ

調査研究プロジェクト

当機構では、改正教育公務員特例法に基づいて教職員の資質向上に関する調査研究プロジェクトを立ち上げ、教員の養成・採用・研修の改善に資する専門的・実践的な調査研究を実施しています。

令和8年度に実施している2つの調査研究プロジェクト「教職員等中央研修の評価・改善プロセスの質向上に関する調査研究プロジェクト(令和7年度~継続中)」及び「実務家教員の質保証メカニズムと役割・機能の最適化を図る調査研究プロジェクト(令和8年度~継続中)」の概要を調査研究に掲載しています。

また、NITS調査研究プロジェクト一覧に、令和7年度に終了した「ニーズベースの研修支援モデルの構築と実装化に関する調査研究プロジェクト」の報告書を公開しています。あわせてぜひご覧ください。

研修マネジメント力協働開発プログラム(地域版)

今年度も全国各地でマネプロ地域版が展開されています。中国四国(令和8年8月26日)、関東甲信越(令和8年9月7日)の参加者を募集中です。 「研修観の転換」に向けた「学び合いのコミュニティ」形成支援事業ページの「各地域の実施について」を随時更新していますので、実施要項をご参照ください。

NITS Learning Hub

NITS Learning Hubを、東京事務所にて、令和8年7月31日(金曜日)、8月28日(金曜日)に開催予定です。多様な立場の人が自分たちの学びや研修の在り方について少し立ち止まって考え、多くの仲間と語り、つながることができる場です。 詳細は、NITS Learning Hubに随時掲載する実施要項等をご確認ください。皆さまのご参加をお待ちしています。

メールマガジンについてのアンケート

令和8年4月より、メールマガジン本文に概要を掲載し、詳細は当機構ウェブページでご覧いただく形式に変更しました。今後の改善の参考とするため、簡単なアンケートにご協力いただけますと幸いです。

回答は匿名です。個人は一切特定されません。
皆様の率直なご意見をお聞かせください。

次号は令和8年8月21日発行予定です。主な内容は当機構教授 百合田真樹人による「子どもの学びと教師の学び」を予定しています。