NITSニュース第253号 令和8年2月20日

探究を促進させる「情報活用能力」の再考 〜生成AIを自己の「成長」に活用していくために

信州大学教育学部 准教授 佐藤和紀

はじめに

デジタル技術の高度化により、子どもたちが日常的に情報を検索し、編集し、発信することが当たり前の時代になりました。学校教育においても、クラウドでの共同編集や遠隔地との対話、生成AIの活用など、学びの選択肢は大きく広がっています。中教審の各教科等のワーキンググループでもデジタル学習基盤と情報活用能力が議題としてあげられています。一方で、情報の真偽を見極める難しさや、アルゴリズムによる偏りなど、避けて通れない課題も増しています。次期学習指導要領の検討では、こうした状況を踏まえ、情報活用能力を「質の高い探究的な学び」を実現するための不可欠な基盤として位置づけ、小学校総合的な学習の時間へ「情報の領域」(仮称)の付加、中学校技術科を情報・技術科(仮称)の設置の議論が進んでいます。

情報活用能力の3要素

中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会情報技術ワーキンググループでは、情報活用能力を以下のように整理しています。

詳しくは中教審の情報・技術ワーキンググループ(文部科学省ウェブサイト)の資料をご覧いただき、いま議論されている情報活用能力をご確認ください。

生成AIを「成長」のために使っているか

生成AIで考えてみれば、①の活用だけ頑張っても、③の特性の理解が浅ければ、上手に活用することもできませんし、②の適切な取扱が不十分であれば、安全に活用することもできないでしょう。このように3要素をバランス良く育んでいく必要があります。もちろん③はなかなか難しい内容もありますから、小学校段階の学習指導の優先順位や幅は①②③となります。私たちは今、生成AIをどのように捉えているでしょうか。単に「できないことを丸投げする(外注の道具)」、あるいは「既にできることを速く終わらせる(効率化の道具)」として満足してはいないでしょうか。

学びの場において真に価値があるのは、AIを子どもの「成長の道具」として活用することではないでしょうか。今はまだ一人ではできないけれど、AIの助けを借りながら、であれば、より高いレベルの問いを立てるきっかけになったり、複雑なデータを読み解いたりできるようになったり、一人ではできない基礎基本を徹底できたり。この「これからできるようになること」を支援する活用こそが、学習の質を左右するのではないでしょうか。

「作法」を揃え、学びを「往還」させる

子どもたちの力を伸ばす鍵は、学校全体で学習の「作法(情報の集め方・扱い方・伝え方)」を揃えることにあります。「情報の領域(仮称)」で学んだ情報活用能力を、各教科の学びや探究で繰り返し活用する。この「往還」が生まれることで、先生方は授業のたびに端末の操作方法を教える必要がなくなり、本来の教育目標である 教科等に集中できるようになっていくはずです。もちろん情報活用能力は操作方法の習得だけではありません。

おわりに

先生方の日常の授業で、子どもたちに「その情報は誰が作ったものなの?」「AIの答えに、自分の考えをどう付け加える?」など問いかけてみてください。こうした何気ない声かけの積み重ねが、子どもたちの情報活用能力を育む確かな一歩となります。技術の進化は速いものですが、大切なのはそれを面白がり、わくわくしながら子どもと共に学び続ける姿勢です。