NITSニュース第252号 令和8年1月22日
校内研修を問い直す
横浜国立大学教職大学院 准教授 脇本健弘
―「方法」ではなく、「私たちの学び」から考える
日本の校内研修、特に授業研究は、教師が協働して授業を振り返り、専門性を高めていく方法として、世界からも高く評価されてきました。日本の学校文化に根ざしたこの営みは、これまで多くの教師の学びを支え、学校教育の質を下支えしてきたと言えるでしょう。
一方で、その校内研修が、いま日本の学校現場において一つの限界を迎えているという声も多く聞かれるようになっています。忙しさの中で形式的に進められる研修、目的よりも手順が優先される実践、参加しているはずなのに「自分の学び」として実感しにくい研修──こうした状況は、特定の学校に限られたものではありません。
これは、校内研修という方法そのものが悪くなったというよりも、うまく機能してきた方法が制度として固定化される中で、本来大切にしてきたはずの問いや意味が見えにくくなっている状況だと捉えることができるのではないでしょうか。
だからこそ今、求められているのは「これまでのやり方を続けるか、変えるか」という二択ではありません。自分たちは、校内研修を通して何を学びたいのか、何を大事にしてきたのか。その問いに立ち返りながら、自分たちの学びを見直していくこと自体が重要になっています。
実際、各地の学校で行われている実践を見ていくと、そのヒントが見えてきます。横浜市立保土ケ谷小学校では、全校一律に授業の公開や検討等を行うのではなく、教師が共に問いを意識することからスタートし、それぞれの問いを共に考え続ける「哲学的な対話」を校内研修の中心に据えました。横浜市白幡小学校では、個別最適な校内研修として、全教職員が同じ内容を一斉に学ぶのではなく、学校として共有する方向性を大切にしながらも、各自が自分の課題や関心に応じて学びを選択していく仕組みを意図的に設計しました。これにより、若手からベテランまで、それぞれが「自分の学び」として校内研修に関わることが可能になっています。
これらの実践に共通しているのは、「自分たちは何を大事にして学びたいのか」「どのような子どもを育てたいのか」という目標や価値を、対話を通して言葉にし直している点です。学校教育目標や校内研修の目的などを、与えられたものとして掲げるのではなく、自分たちの言葉でつくり直していく。そのプロセスそのものが、教師の学びになっています。
目標が共有されることで、すべてを同じ重さで取り組む必要はなくなります。何を重点化し、何を手放すのかを判断できるようになるからです。校内研修もまた、その目標の実現に向けて、どのような学びが必要かを考える場として再構成されていくのではないでしょうか。
校内研修に「正解」はありません。しかし、自分たちの学びを問い直し、何を大事にしていきたいのかを語り合いながら、これからの学びを創っていくことは、どの学校でも始めることができます。校内研修を、方法から考えるのではなく、「私たちの学び」から考え直してみる。その一歩が、これからの校内研修を支える力になるのではないでしょうか。