NITSニュース第249号 令和7年10月22日

学校の組織開発

おのみず株式会社 代表取締役社長 勅使川原真衣

人材開発と組織開発

人材開発や能力開発は耳になじみがあるでしょうか。私もキャリアの前半で取り組んできた分野です。「優秀」な人が優秀な組織をつくるとの前提に立ち、評価・選抜によってチームが作られます。他方で組織開発は、人を選りすぐろうとしません。「あの人が使えないから忙しいね…」でも「あいつさえいなければもっと進むのにな」でもないのです。個人に優劣や序列をつけることなく、その人の「持ち味」をよく見ます。「あの人ってほんと“せっかち”だよね。まぁじゃあ早め早めに予定は未定だとしても耳に入れておくか」と対応したり、お互いの「持ち味」の違いを共有し合った上で、あえて“のんびり”屋のタイプと組み合わせたりすることもあります。誰かを悪者にも英雄にもすることなく、今チームにいる人それぞれの持ち味を最大化すること を試みる営為なのです。

なぜそんなことができるのか?それは、人の「能力」なんていうのは、誰と何をどのようにやるか?次第であるからです。個人のなかに、臓器の一部のごとく内在していると信じられているのが「能力」ですが、それは虚妄と言わざるを得ません。能力はもっともっと文脈依存的で、人と人との相性の影響を多分に受けます。皆さんにも経験があるかと思いますが、目の前の人がしかめっ面で腕組みしていたら、うまく話せなくなるのが人間なのです。それはその人の「コミュ力」だけの問題ではないはずです。ゆえに学校の組織開発は、人間なら誰同士でも存在する得手・不得手などの違いに良し悪しをつけずに、凸凹を組み合わせるため、「“すでにあるもの” を最大限生かす」というエコで現実的な手法と言うこともできるわけです。

想定される向かい風

とはいえ、何事にも懸案はあります。組織開発が人を「選ぶ」という発想に縛られず、今いる人の中でなんとかやる手法だとして、どんな落とし穴がありそうでしょうか。最たるものが、「はっきりしない、わかりにくい、おわりがない、予測できない」ことへの耐性です。

何らかの選抜試験を受けさせて点数を序列化したほうが、「誰が優れているのか?」「誰は管理職候補か?」「誰は不適切か」……はわかりやすい。しかし、「能力」の数値化や序列化は、そぎ落としている事実が多々あります。たとえば、“この先生はこういう人”と能力評価を我々は往々にしてしてしまうのですが、連綿とつづくその方の人生のごく一部のスナップショットについて、断定的に「人となり」として、評価することに他なりません。人は環境によっていかようにも変わり得るのに。

謝意からはじめる

100%の効目で、副作用ゼロの特効薬はありませんが、メリットとデメリットを冷静に判断した上で、挑戦できるところからはじめてみても損はないでしょう。特に、いつも実践の第一歩として、謝意からはじめるのが組織開発ですよ、とお伝えしています。(自分とは違うあなたが)今日もここに居てくれてありがとう。助かるよ。──まずは大人たちが。そして子どもたちに、この存在そのものの承認の輪が広がることを願うばかりです。